パントンチェア ( Panton Chair )は、1960年代にデンマークの生んだ奇才ヴェルナーパントン( Verner Panton )によってデザインされたS字型のプラスチックチェアーです。
世界初のプラスチックチェア
タイトル通り世界初となるプラスチックチェアで、その歴史は意外にも古いです。
北欧デンマークデザインの傑作の一つで、その流れるような流線形のフォルムと一体型シェルは、パントンの代名詞としても知られています。
アールニオ のボールチェア と同様に、 ミッドセンチュリー 、 北欧インテリア 特集に必ずと言って良いほど登場する スペースエイジデザインのトップ選手でもあります。
それでは、 パントンチェアの誕生秘話から詳しくご紹介して参ります。
パントンチェア 誕生秘話
時代は 1950 年初頭まで遡ります。
綺麗に積み上げられたプラスチックのバケツを見たパントンは、あるインスピレーションを得ます。
『スタッキング出来るプラスチックの一体型シャルの椅子が作れないだろうか…。』
1956年になった頃、パントンチェアの先駆けとなる『 Sチェア 』をデザイン。
※このころはまだ『 Sチェア 』と呼ばれていたそうです。
1960 年に入り、Dansk Akrylteknikとの協力を得たパントンは Sチェアの制作に拍車がかかり、まずは、モデルのひな形を 石膏キャスト で制作
その後、
パントンのデザインに魅了された 家具メーカーの老舗 ヴィトラ社( Vitra )のウィリアム・フェールバウムと会い、 ロルフ・
※そのフォルムからメンバー間ではフリースインガーと呼んでいたそうです。
基盤は出来つつも、
実質的な仕上げ作業を必要とするプロトタイプはかなり重く、
コストパフォーマンスもかなり悪かったそうですが、熱可塑性ポリスチレンを用いた工業生産に改良適応され、コストの大幅な削減につながったと言われています。
その後耐久性などを考慮し、マテリアルチェンジ重ね 見事完成に至ります。
パントンチェア販売後の歴史
1968年に入り、ハーマンミラー社(Herman Miller Furniture Company)によって最終版の生産を開始。
用いた材料はBayer
※聞きなれない素材ですが、これはドイツのレーヴァークーゼンにバイエルが製造した高反発性ポリウレタン発泡体です。
しかし、経年劣化による耐久性の問題が明らかになったため、なんと製造が一時中止。
それから 4 年の月日が流れ、
このモデルは パントンクラシック ( Panton Chair Classic )として再び製作されたようですが、
今度はまたかなり高価なポリウレタン構造発泡体で製造されたようで、こちらもコストが非常に高かったそうです。
更に時は流れ、時代は1999年、パントンチェアにカラーバリエーションを増やすべく材質にポリプロピレンを採用し、現在に至ります。
以上の事から、
パントンチェアは 多くのマテリアルチェンジが入った事でも知られています。
オークションでも年代の異なるヴィンテージが度々出品されていますが
当然年代ごとにカラーバリエーションや作りにややバラつきがあります。
座面の強度を上げる為の シャギー のようなものが入ったものから、
リプロダクトまで混在しているので、リプロはともかく年代を狙ったヴィンテージ品の見極めにはやや知識が必要です。
現行で発表されているモデルは、ざっくり分けて3つです。
»【パントンチェアクラシック( Panton Chair Classic )】
※こちらからリプロも一覧でご覧いただけます
余談ですが 、パントン作品って一見すると、アールニオのような温かい印象を受けますが、知れば知るほど ペイズリー柄のようなドラッグカルチャーのような雰囲気を感じます。
パントン展の玉数を集めた事による、遠近感の歪んだ咽返るような空間作りは素晴らしく、まさに『デンマークが生んだ奇才』だと思います。
以前私はネパールで暮らしていた頃があったのですが、その時行ったライブハウスの椅子全てパントンチェアで
『まさか、ネパールにも?』
と意表を突かれながらも、窓枠が手彫りのオリエンタルな伝統建築に、ズラーっと並ぶ黒のパントンチェアが無茶苦茶かっこよかったです。
リプロだと4000~5000円程で購入可能なので、数脚揃えてみるのもありかもしれません
それでは、今後も素敵なスペースエイジプロダクトを紹介してまいりますので宜しければご覧ください。